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2024年10月7~8日、平壌の万寿台議事堂で行われた最高人民会議。朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信
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北朝鮮インサイト⑯

 北朝鮮で、国会にあたる最高人民会議(第14期第11回会議)が開かれました。同じ民族である韓国を「敵対国家」と位置づける憲法改正をしたとみられますが、詳しい中身はわかっていません。北朝鮮が改憲した目的や狙いは何か。今後の南北朝鮮の関係は何が変わり、何が変わらないのか。公安調査庁で長く北朝鮮を分析してきた坂井隆さんは、北朝鮮の真意を見極め、「慎重な楽観主義」で考えていくべきだと指摘します。

【連載】北朝鮮インサイト

核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた元公安調査庁職員による、プロフェッショナルの見方をお届けします。

 〈箱田〉どんな改憲がされるのか注目された最高人民会議ですが、金正恩(キムジョンウン)総書記が1月の同会議で言及した、韓国を「敵対国家」と明記したのかどうかは、あきらかにしていません。

 〈坂井〉「大韓民国を徹底的な敵対国家として規定した」ことは確実でしょう。金正恩氏が前回会議で訴えた憲法改正のポイントは四つあります。①北朝鮮の「主権行使領域」の確定②「祖国統一」などの文言削除③戦時における韓国の「占領・平定」④韓国に対する「敵視」教育の強化、です。改憲以降の最近の動きから考え、事項的にはこれらすべてが憲法に盛り込まれたと推測されます。

北朝鮮ウォッチャー 坂井隆さん

さかい・たかし 1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など。

 〈箱田〉北朝鮮は最高人民会議が終わった後の10月15日、韓国とつながる道路と鉄道を爆破しました。そしてそれは韓国を「徹底した敵対国家」と規定した憲法の要求に沿った措置だと報じています。

 〈坂井〉まさに爆破は①の主…

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